支部長コラム其の3「坂本タクマ、ドクター・トレシズの凄さを大いに語る!」

eyecatch

世界のトレーダーのみなさんこんにちは。3回目の支部長コラムの時間がやってまいりました。

 今回は、全シ連33話にご登場いただいたトレシズさんとのお話について書きたいと思います。過日行われたトレシズ、オカノ、オオウチ、坂本による四者会談は大変に実りの多いものでした。漫画の中には収まりきらない話がまだまだたくさんあります。今回は、その中でも特に坂本の印象に残った話をご紹介いたします。
 なお、すべての話が入った「完全版」は、そのうち何らかの形でみなさんのお目にかかるかと存じます。
 
 
 まず、トレシズさんについて特筆すべきなのは、その徹底した検証ぶりです。ひとつの戦略を世に出すまでに、数千回もの検証を重ねるというのです。初期の頃には1万回もやっていたとおっしゃっています。ただただ驚きます。たまげます。腰を抜かします。

 びっくりはするのですが、しかし、なぜそんなにするのか、とういふうには思いません。ちょっと考えればわかりますが、徹底的に検証しようと思えばそのくらいには「なっちゃう」のです。
 簡単な例を挙げましょう。
 4つのパラメーターがある戦略をこしらえているとします。それぞれのパラメーターについて10個の値を試すとすれば、10の4乗で・・・はい、1万回になっちゃいます。その中から、明らかにダメな組み合わせを除いたとしても、数千回くらいにはすぐになっちゃいます。パラメーターを増やしたり、もっとたくさんの値を試したりすれば、もっと大きな数にもなっちゃいます。
 理屈の上ではそうなっちゃうことはわかるのですが、実際にそれをやっちゃう人がいちゃうことに驚いちゃうのです。私などは、いかに回数を減らすか、ということにばかり気がいっちゃうのです。
 ここでひとつ、気になったことを質問しました。システムトレードの根幹に関わる重大なことです。

「そうやってできる広大なマップから、どうやって実戦投入するものを選ぶんですか?」
 そのお答えには、ちょっと意表を突かれました。このようにおっしゃったのです。

「ほとんど感覚ですね。細かい数字の違いにはこだわりません」

 感覚?ここへ来て、芸術家肌?職人技?
 それだけの回数検証するからには、最強トーナメントを行っていて、一番になったヤツを連れて行く、というような方式なんだと勝手に想像してたものですから、少々意外な感じがしたのです。
 しかし、後からよく考えてみますと、それだけやれば、細かく比較などしなくてもパッと見てそれとわかる、どこがいいか一目瞭然なのではないか、と気付きました。
 医療における画像診断では、解像度が高いほうが診断しやすいことは容易に想像できます。それと同じことが戦略作成でも言えるのではないでしょうか。高精細なマップを得ることによって、「大体この辺」とあたりをつけた場所がハズレである確率を低く抑えられるということでしょう。
 もちろんその「感覚」は、たくさんの戦略作りと実戦の経験によって研ぎ澄まされたものであって、誰もが持っているものではないでしょう。たくさんの検証と鋭い感覚、この2本立てが、トレシズさんの強みであるとお見受けします。検証をすればするほど、さらに感覚がよくなっていく、という好循環もあるに違いありません。

 このようなしっかりとした土台が、岩盤があるからこそ、「ヤラレているときはむしろチャンス」というようなお言葉も生まれてくるのだと推察します。
 負けているときに消極的にならない、というのは、なかなか難しいものです。たとえ理屈でわかっていたとしても、心や体がいうことを聞きません。トレシズさんには、たくさんの検証によって培われた揺るぎない自信がおありです。だからこそ、ドローダウン中に積極的になれるのだと思います。
 これは、誰もが真似できることではないと思います。私自身は、ちょっと真似できないな、と思っております。私程度のショボイ検証回数では、そこまでの自信は持てないからです。
 真の強者というものは、人の真似できないことの一つや二つは必ず持っているものである、ということであります。

 高精細なマップからどうやって実戦投入するものを選ぶか、という話にもどりますが、トレシズさんは「複数のものを同時に投入することもある」というようなこともおっしゃっていました。一つの戦略の中で、仕掛け位置を複数用意しておく、というようなことのようです。
 これも、「この辺であれば大体どれでも期待値プラス」ということがわかっているからできることなのでしょう。1個の最適解を見つようとするよりも、リスク分散の観点からいって優れた方法なのではないでしょうか。過剰最適化を避ける、という意味もあるかも知れません。ここら辺は、たとえ並の検証回数しか行っていなくても、大いに参考になるところではないでしょうか。

 さて、トレシズさんはまた、空売の有効性について強調なさっていました。この点は、坂本も一緒になって強調したいところです。
 大地震が頻発する今、空売を一切しないのは怖いと感じています。空売自体が怖いと感じている方でも、大地震の時の大ヤラレを少し軽減する、くらいの目的で研究を始められてはいかがでしょうか。
 当然のことながら、トレシズさんは売り戦略に関しても数々のバリエーションをお持ちだろうと思います。そこで、普段から気になっていたことをおたずねしてみました。

「売りの逆張りって難しくないですか?」と。

 自分自身のつたない経験では、売りの逆張りで取るのがなかなかうまくいかないのです。トレシズさんのお答えはこうでした。

「下げトレンドにあるものが、少し戻したところを売ります。大きく上げているものはやりません」

 なるほど!そうやってやるのか、と思いました。買いの逆張りであれば、下げが深くなるほどエッジがある、というのは多くの方がおっしゃっていることだし、私自身も検証して確かめています。けれどもその逆、ガツンと吹いたものを売る、というのはやめたほうがよさそうだ、ということです。
 
 
 このほかにも、資金管理に関するパワフルな手法とか、相場判定に関する驚きの方法とか、「お金に換算したら一体いくらになるんだ」というくらいたくさんの情報をご提供いただきました。とっても得する1日でした。
 
 
 結びとして、「トレーダーと会う」とはどういうことか、ちょっと考えてみます。
 以前テスタさんにお会いしたときにも感じたことですが、このような儲けている、エラいトレーダーの方々というのは、相場に関するどんな質問に対しても明確な答えを用意していて、即答なさいます。その場で考えているわけではなく、何年にもわたって考え続け、実践し続けてきたことに基づく、とても練られたお答えが返ってきます。そのたびに、何か技を掛けられたような、投げ飛ばされたような感覚に陥ります。「やられた」という感じです。
 武道家や麻雀打ちなんかだと、ちょっと手合わせしてみれば相手の力もわかろうというものですが、トレーダー同士というのは、語り合うことでしかわかり合えないものだと思います。今まで幾人かのトレーダーにお会いしましたが、いつもあっという間に時間がたってしまい、予定をオーバーすることもしばしばでした。自分自身も含め、それだけトレーダーというのは語ることに飢えているんだろうと思います。
 語り合えば、とても充実した気持ちになります。それと同時に、もっと頑張らねば、とも思います。相手が与えてくれた情報に見合うだけの情報を、こちらは与えられていない、と。もし次に会うことがあるならば、それまでにはもうちょっとましなトレーダーになっていよう、と。まあ、相手がテスタさんやトレシズさんといったスーパートレーダーなので、しょうがないといえばしょうがないのですが・・・
 忘れてはならないのは、こういうすごい人達と会うことができたのは、自分が漫画を描いているからだということです。つまり漫画こそ自分のエッジなわけですから、そっちはそっちで頑張っていかねば、と思います。